2025.03.31調査研究
簡易な湿度管理を目的とする除湿媒体の検討
研究代表者:小林光(東北大学大学院)
本研究では、熱中症リスク等に繋がる高温多湿時の室内湿度管理に資することを目標とし、安価、簡易、エコな除湿空調システム実現のカギとなる除湿材料、除湿媒体の調査研究を計画した。除湿空調は既に存在するものの、本研究は特にシステムを極限まで簡易化しすることを目指し、吸湿性と導電性を持つポリマーPEDOT:PSSを用いて、通電による再生が可能な新たな除湿媒体の開発を行った。
PEDOT:PSS単体の薄膜が持つ吸湿性能が他の除湿材料に比肩することを確認しているが、薄膜は非常に脆く、除湿空調に用いるには他の材料(以降、基材)に添着させる必要がある。こうして作った除湿媒体はこれまで期待した性能に全く及んでいなかった。本研究において、除湿媒体に用いる新たな基材候補を検討し、実験と観察を通じて不織布が適することを確認した。不織布にPEDOT:PSSを含侵すると、繊維間に微細なPEDOT:PSSの膜が形成され、空気との接触面積が大きく、目的との相性が良いことを確認した。また、PEDOT:PSSを添着させた不織布が通電再生に必要な導電性を発現することを確認した。10cm×10cmの不織布による除湿媒体を積層させた通電再生型除湿空調ユニット試験体を作成し、除湿と通電再生を交互に繰り返す実験を実施し、JIS試験条件相当の実験で、絶対湿度にして8g/kg(DA)以上の除湿の可能性を確認した。以上より、本研究成果の実用性が確認され、今後の実用化を視野に入れた研究開発につながる成果となった。
今後、簡易で導入が容易な除湿システムの実現に向けた研究開発を継続し、建築内の湿度管理を通じた、建築物における環境衛生管理への貢献を目指す。