2019.04.26調査研究

統計学を用いた室内環境モデル化に関する研究

主任研究者:古屋 浩(芝浦工業大学建築学部 教授)

本研究では、浮遊微粒子の個数分布濃度の把握と不確かさ指標を用いたモデル化の検討を目的とし、首都圏の11ヶ所の事務所ビルを対象として、可搬型のSMPSと詳細に分級可能なLPC2種類のデジタル粉じん計を使用し、室内の浮遊微粒子の測定と分析を行った。質量濃度の測定結果はすべての建物において建築物衛生管理基準の0.15mg/m3以内であることを確認した。また、個数濃度の測定結果から、個数濃度分布の概形は101,000nmまでは弧を描くような形で、それ以降は直線的に減少しているということを示した。次にモデル化を行うために粒径分布と個数濃度分布に対して対数を取ったグラフ上で近似を行った。粒径101,000nmの範囲に対してy-c=a(x-b)2の二次曲線近似、粒径1,00010,000nmの範囲に対してy=dx+eの一時直線近似を行い、得られた係数a~eの平均値を近似式に代入することで平均モデルを作成した。近似から得られた決定係数R2は建物ごとに異なるが、すべての建物において0.9を上回っており、良好な相関を示した。さらに各係数に対し標準偏差の95%信頼区間と不確かさの95%信頼区間を求め、領域を作成することでモデルのばらつきを表現した。標準偏差で、今回測定したサンプル自体のばらつきを、不確かさで母平均のばらつきを表している。よって、本研究ではデータのばらつきを示しつつ、室内の個数濃度分布を表現する一般モデルを作成した。今後の課題として、各係数間の相関を調べモデルの特性を模索する事や、データの蓄積等が挙げられる。

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