2019.04.26調査研究

空調システムの違いによる浮遊粒子状物質の特性評価

主任研究者:鍵 直樹(東京工業大学環境・社会理工学院 建築学系 准教授)

建築物衛生法においては、建築物環境衛生管理基準として、粒径10μm以下の浮遊粉じんについて基準値を設けている。現在の特定建築物における浮遊粉じん濃度は、基準値に比べても十分に低く、不適率についても問題がない状況である。大気においては、粒径2.5μm以下の粒子を対象としたPM2.5について、環境基準を設けているが、室内における基準などはないのが現状である。

また、特定建築物の範囲として中央式の空調機を有する建築物を対象としていたが、個別方式も対象としたことで、室内の空気質の状況は両者で異なっていることが想定される。

そこで本研究では、建築物における空調システムに着目し、空調システムの違いによる室内空気質、特に微小粒子について、実態の把握を行い、室内濃度低減化の可能性について検討を行った。

中央式及び個別方式を有する複数の建築物を対象に、PM2.5濃度ととも10nm10μmの広範囲の粒径別個数濃度を測定した。結果として、室内PM2.5濃度は、大気の1日平均基準値である35μg/m3以下であり、外気と室内のPM2.5濃度の比であるI/O比は外気よりも低濃度である、1以下の建物が多く存在した。中央式と個別方式のPM2.5濃度、PM2.5濃度及び各粒径におけるI/O比は有意に中央式の方が低い値となり、中央式の中性能フィルタによる室内浮遊微小粒子における優位性が示された。

さらに、室内における粒径別粒子の物質収支モデルを構築し、このモデルを元に個別空調システムにおける室内濃度の低減の可能性について検討した。濃度の高かった個別方式においては、空気清浄機を今回実測した建物に適用した場合の効果について予測を行った。その結果、特に室内容積が小さい部屋においては、室内濃度を効果的に低減することが可能となることを確認し、対策として空気清浄機の個別空調システムを採用した建築物における室内空気質の向上を定量的に示した。

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