2019.04.26調査研究

建築物の内装材の反射率が室内環境へ及ぼす影響に関する実験的調査

主任研究者:垣鍔 直(名城大学理工学部 教授)

室内照明設計では室形状や内装材の反射率などを考慮する。必要照度を確認するための計算方法(光束法)は教科書に掲載されている程一般的であるが、計算に用いられているデータは蛍光灯を光源とした場合であり、最近のLED光源のデータではない。LED光源の場合、配光分布が蛍光灯と異なり、照射方向の分布が強い(グレアが強い)と言われている。従って、床面と天井面の相互反射の影響が大きくなる可能性がある。つまり床面の反射率の影響、清掃管理の質により、室内の照明環境が影響を受けることが予想される。そこで本研究では、LED光源の場合の周壁・床面・天井面の反射率(汚れ度との関係)を変化させたときの照度の変化・反射率の影響を定量的に検証するため、実験室内に照明器具の高さと周壁の反射率(壁の色・光沢の有無)を変えられる実験ブースを制作し、床面および机上面の照度を測定するとともに周壁の輝度を測定し、反射率の影響を検証した。

その結果、照度で20(lx)程の差があった条件では、照明率に1%の差が見られた。壁面が黒色(汚れていると想定)の場合、室指数(測定高さ)が同じ条件では最大で3%程度の差が出ることが分かり、天井面、床面の反射率の影響をあまり受けないという結果となった。壁面が灰色の場合もほぼ同様で壁面が白色(清浄と想定)の場合、照度と同様、照明率は最も高い値を示した。また、天井面の表面色が変化した場合、黒色、灰色の場合ではほぼ同様の値を示し、白色の場合に僅差ではあるが最大の数値を示した。床面の表面色の変化においてはどの色においてもほぼ変化がなく黒色が高い場合もあったが、壁面が白色の場合は、最大で21%の差を確認した。一般的な室内の天井面が白色、床面が黒色で天井面の色が変わった時、黒色や灰色では差が見られなかったが、白色では20%近い差がみられた。壁面の光沢の有無においては14%程度の差であり、光沢度はそれほど影響はなく、色(反射率)で判断されることが推察された。一般的な環境では綺麗に見せるため、壁面や天井面が白色になっていることが多いが、照明環境においても本条件が最も効率の良い結果となった。

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