2019.04.26調査研究

レジオネラ症感染リスク評価のための疫学データの収集・解析に関する研究

主任研究者:倉 文明(国立感染症研究所バイオセーフティ管理室)

我が国では、レジオネラ症防止指針(日本建築衛生管理教育センター刊)において感染危険度のスコア化により細菌検査の回数の目安が提示されている。一方、海外のガイドラインではスコア化という言葉がみられず、実際には、集団感染事例後の対策として管理強化のなかで検査回数が増加していると思われる。米国ニューヨークやカナダの冷却塔による大型の集団感染事例後の冷却塔管理がその好例である。

本研究では、国内外のレジオネラ症集団感染事例について調査した。日本では入浴設備による事例が多く、最近加湿器による事例が続けてみられた。加湿器や(海外の散発事例として)歯科ユニット等もスコア化の表に例示したい。

2015年の米国で、疫学情報とともに届出された症例について集計すると、レジオネラ肺炎は7%致死であった。保健医療施設に限ると12%致死で、潜伏期間である発症前10日間保健医療施設に滞在した事例だと25%致死に増加する。このように保健医療施設の感染防止対策は一層重要であり、人側要因として現状のスコア化にも反映されている。

米国、欧州、英国等の海外のガイドラインについて調査した。2015年、ASHRAEthe American Society of HeatingRefrigeratingand Air-Conditioning Engineers)はレジオネラ肺炎の一次防御のための基準を発表し、ビルの大型・複合水系の水管理プログラムの作成と履行を求めた。またCDCは新基準の履行を促進するためにtoolkitを開発した。

その後も、The National Academies of SceiencesEngineeringand Medicineによるプロジェクトが進んだ。欧州でも2017年にECDCの技術的指針が更新されている。ここ数年の間に諸外国においても、人工水環境におけるレジオネラ症対策のガイドライン等が発行・改訂されており、レジオネラ症防止指針改訂にあたって感染リスク評価を検討する一材料となる知見が得られた。

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