2018.04.27調査研究

特定建築物における照明方法のあり方

主任研究者:中村芳樹(東京工業大学環境・社会理工学院 建築学系 都市・環境学コース 教授

時代の変化にともない、建築物の光環境の考え方もより高質なきめの細かい配慮が要求され、建築物の使用者が視覚的疲労感や不快感を生じることなく、効率的かつ安全に継続して活動できる環境を整備することが重要視されている。さらに、従来のJISの照度基準だけではなく、建築物の光環境の指針となるCIE/ISO国際規格屋内照明規準(屋内作業場の照明)が制定され、この国際規格に準拠した光環境性能が確保されることが望まれ、建築物の全使用期間にわたって適切な光環境性能を維持するための取り組みが今後の課題とされている。そこで、管理技術者テキスト、空気環境測定実施者テキストにおいて、新しい照明方法や照明器具並びに適切な照度・色温度などの照明に関する測定方法などを示すことは重要であるため、現状で最も整合性のあるJIS基準あるいは学会規準および学術文献などを含めて整理することとした。

情報を収集した結果、これまでのような、全般照明として十分な照度を確保しようとする光環境の管理は、エネルギー消費量を削減する方向への社会的な動きを阻害することになり、これは国の方針とは一致しておらず、関連学会が推奨している光環境を管理していることにはならない。光環境の管理は全般照明方式を採用した部屋であっても、タスク・アンビエントを想定した運用を許容するものである必要があり、作業面の照度は確保するものの、それ以外の照度は下がることを許容するが、その場合には、天井や壁面の輝度、照度が確保されていることを保証する必要があり、それらの面の輝度や照度をチェックして管理することが求められる。また、今後は照明コントロールシステムが導入された建築物が増え、それらのコントロールが、当初想定した性能を有しているかどうかを管理することも必要となる。

一覧へ戻る