2018.04.27調査研究

建築室内での浮遊粉じんのモデル化に関する研究

主任研究者:西村直也(芝浦工業大学建築学部建築学科 教授)

日本では、室内の浮遊粉じんに関する規制として、建築物衛生法がある。この基準は概ね10μm以下の浮遊粉じんに対して0.15mg/m3以下と定められており、現状では殆どの建物においてこの基準はクリアされている。その一方でPM2.5に代表されるように、より粒径が小さく、したがってその質量が小さい物質についても大気環境の分野では一つの基準として定着している。その一方、建築室内における基準は存在しない。この理由の一つとして、微小な粒子の質量濃度の測定に用いる計測器が大型であり、室内において定期的な観測には向いていないことが挙げられる。

本研究においては、5棟の対象建物の室内において、可搬型のSMPSおよびOPCを用いることによって、10nm~10,000nmまでの浮遊粉じんの個数濃度の実測を行った。ここから得られたデータを元に建築室内における浮遊粉じんの体積濃度を算出を行い、またこれらの個数濃度をベースに、体積濃度の算出を行った。その結果を踏まえ、フォトメータ(デジタル粉じん計)による質量濃度の測定結果と併せて、密度の算出を試みた。その結果として、1)微小(概ね100nm以下)浮遊微粒子状物質の個数濃度については、大気(屋外)での観測同様、対数正規分布を描くことが示された。2)粗大(概ね100nm以上)の浮遊粉じんについては、Jungeの法則に従うことを確認した。3)浮遊粒子状物質の密度に関しては一定の値を得ることはできなかった。4)今回使用したOPS3300については、300~400nm近辺において明らかに低い、あるいは高い値を示し、この補正方法についての検討が必要であるが、今回の研究の範疇では無いため検討は行わなかったが、この点に関して何らかの対処を行う必要があることが明らかになった。

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