2015.04.30調査研究

室内の粉じんに関する調査研究

研究指導員:西村直也(芝浦工業大学工学部建築学科 教授)

建築物における衛生的環境の確保に関する法律(建築物衛生法)では、相対沈降径が概ね10μm以下の浮遊粉じんの量について管理基準が設定されている。大気環境においても同様な定義の粒子状物質について環境基準が設定されているが、近年では粒子状物質の中でもより微小な物質が健康に影響を与えるという科学的な知見の蓄積などから平成21年に微小粒子状物質(以下PM2.5)に係る環境基準が告示され、さらに越境汚染も話題となり、人々に関心が持たれている。特定建築物の室内の浮遊粉じんの量は、定められた方法に則り定期的に監視されているが、室内のPM2.5については建築物衛生法の管理項目として設定されていないことや公的かつ簡易な測定器がないこともあり測定例が少ない。本研究では、特定建築物のPM2.5について環境省認定自動測定器を標準として小型簡易測定器による実態調査を実施した。さらに重量法による粉じん量の測定とデジタル粉じん計による測定を行いSPMとPM2.5の関係などを検討した。これらの調査により以下の結果を得た。特定建築物内のPM2.5は平均7.5μg/m3、平均I/O比は0.6であり概ね外気より室内濃度は低濃度であることを確認した。認証測定器に対して市販の小型測定器の濃度変化の動きは一致していることから適当な係数を乗じることによりPM2.5濃度を把握することができる。ただし、測定場所の粒径分布の違いにより光散乱式のこれらの機器は係数の変動があることから測定データを蓄積して係数を決定する必要がある。さらにデジタル粉じん計の値と認証測定器の濃度変動は良く一致することからデジタル粉じん計による定期モニターによってPM2.5の監視も可能であることが確認された。

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