2015.04.30調査研究

社会福祉施設の環境衛生管理に関する調査研究

主任研究者:金勲(国立保健医療科学院)

本研究では、高齢者施設を中心に社会福祉施設の室内環境衛生の管理に対する実態把握及び保健所の支援モデルを構築することを目的とした。なお、調査研究の遂行及び自治体支援方策を検討するために、自治体保健所と協力しワーキンググループを設置、支援のための資料(マニュアル)の作成を行った。研究の詳細は以下の通りである。(1)全国の保健所を対象とした社会福祉施設の環境衛生管理に関するアンケート調査、(2)保健所における支援事例に関する調査、(3)実測及び聞き取り調査、(4)支援モデルの構築(マニュアル作成)

高齢者福祉施設の入所者の多くは要介護度の高いハイリスク者であり、施設側は環境衛生管理や感染症対策に取り組んでいるが管理体制は十分でないこと、保健所設置自治体のうち、生活衛生担当部局による高齢者施設を対象にした環境衛生管理に関して何らかの取組みを行っている自治体は1~2割と少ないことが明らかになった。冬期実測結果、温度及びCO2濃度は概ね良好に管理されていた。居室の平均温度は約21~26℃の範囲内で管理されており、施設によって目標管理温度に差があることが分かった。一方、全施設で加湿を行っており湿度への関心は高いが相対湿度40%RHには至っておらず加湿量が足りないことが明らかとなった。環境衛生に関する専門的知識や技術を持った従事者がいない中、介護業務の傍らに設備と環境衛生の維持管理をする大変さがうかがわれた。それを踏まえ、専門的な技術者でなくてもそれらの維持管理の手法が理解できるマニュアルの作成を心がけた。今後は、マニュアルの作成にととどまらず、講習会や施設からの相談の中で高齢者福祉施設の衛生的環境の確保を支援する必要がある。なお、さらに実態を検証し、室内環境衛生水準の改善に向けて提案を行っていく必要があり、環境保健水準底上げを意図した「建築物衛生法」との関係の見直し、ハイリスクアプローチとの連携・融合も視野に入れた検討が求められる。

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