2014.04.30調査研究

室内環境中の微小粒子の健康影響と計測技術に関する研究

主任研究者:明星敏彦(産業医科大学産業生態科学研究所 教授)

現在の建築物衛生法が対象とする浮遊微小粒子は粒径10μm以下という比較的大きな粒子を質量濃度で評価するものである。近年の特定建築物の浮遊微小粒子は、室内の禁煙化、分煙による発生源そのものの現象やエアフィルタの高性能化などにより質量濃度が低下していると考えられる。しかし、粒径が小さい粒子は質量濃度としての寄与は小さいが、個数濃度では大部分を占め個数濃度では大部分を占め、微小粒子ほど肺の深部まで到達することによる健康リスクが高まることから室内における微小粒子の健康影響が注目されている。本研究では浮遊微小粒子と測定装置について概要を紹介した。以下のような課題を今後検討する必要があると考える。 

1)対象となる粉じんのレベル

測定すべき浮遊粉じん計のレベルは、従来は0.1g/mg/m3(100μg/m3)であったが、今後はPM2.5のレベル(15μg/m3)まで下がると思われる。光散乱方式の粉じんを用いた測定の下限に近づいている。一方、光散乱方式の粉じん計を用いた測定の下限に近付いている。一方、光散乱方式粒子計数装置の測定濃度の上限は1桁以上上がっており、希釈せずにPM2.5のレベルを測定可能になってきている。

2)個人曝露濃度の連続測定

光散乱方式の粉じん計の精度は機器の構造と較正の良否で決まる。しかし、米国では粉じん検出部のみの製品があり、データ記録部をスマートフォンで代用し低価格化を目指していた。両者の接続を無線で行い、他に温度や炭酸ガス濃度を測定するセンサを取り付けることを検討していた。粉じん濃度の正確さについては疑問が残ったが、簡易な携帯装置による室内環境の連続計測の利点は大きい。

3)粉じん粒子の測定対象サイズ

健康影響は粉じんの質量濃度の値のみでは判断が難しい。PM2.5は2.5μm以下の粒子という意味ではあるが、サイズは粒子発生源を示しており土壌由来粒子ではなく燃焼生成物からなる粒子を狙った測定である。同様に室内でも従来と異なる粒子発生源が考えられるが、これを知るためにはより精密な測定が必要である。測定対象の粒子の大きさも従来のサブミクロンサイズ(0.1~1μm)からより小さなナノサイズ(0.001~0.1μm)まで下がっており、個数濃度に比べ質量濃度が低く生態影響についても基準となる濃度を別に考える意見が覆多い。現在でもなのサイズの粒子については測定装置はあるが小型で携帯可能とはいえない。ミクロンサイズの粒子にも引き続き目を向ける必要がある。カビの胞子は種類によっては大きさが揃っている。濃度は高くないので卓上型走査型電子顕微鏡などを用いないと判定は難しいと思われる。

4)粉じん粒子の組成

粒子の組成はその発生源を示し、それによって有害性の程度も異なる。質量分析装置を用いた粒子のオンライン測定は高性能であるが、装置の大きさ野価格から導入は困難である。卓上型走査型電子顕微鏡などオフラインの成分測定は従来に比べ簡易となり、今後さらに利用されると思われる。 

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