2011.05.02調査研究

建築物環境衛生管理基準の設定根拠の検証について

主任研究者:東賢一(近畿大学医学部環境医学・行動科学教室 講師

建築物衛生法における建築物環境衛生管理基準のうち、空気環境の測定項目である、浮遊粉じん、一酸化炭素、二酸化炭素、温度、相対湿度、気流、ホルムアルデヒドに関して、これらの基準を設定するにあたっての調査研究資料の収集と、設定根拠に関する検証を行った。また、これらの項目に関する近年の科学的知見を調査し、その整理を行った。
建築物環境衛生管理基準の設定は、1966年に報告された厚生科学研究「ビルディングの環境衛生基準に関する研究」が基盤となっており、温度と気流に関しては、この研究の中で報告された当時の知見に基づいていると考えられる。相対湿度も同様であるが、建築物環境衛生管理基準の下限値については、1960年代に報告されたインフルエンザウイルスの死滅率に関する研究が基盤になっていると考えられる。二酸化炭素についても同様ではあるが、1968年に世界保健機関(WHO)が公表した「住居の衛生基準に対する生理学的基礎」の報告書も考慮されていると考えられた。浮遊粉じんと一酸化炭素については、大気汚染における取り組みが関与している。浮遊粉じんについては、公害防止計画策定の基本指針、一酸化炭素については、大気環境基準を設定する際に各々の研究会や専門委員会で提案された数値が参考にされたと考えられる。ホルムアルデヒドの建築物環境衛生管理基準は、WHO 欧州が公表した空気質ガイドラインが考慮されている。
近年の科学的知見については、温度、相対湿度、二酸化炭素、浮遊粉じん、一酸化炭素、ホルムアルデヒドに関して調査を行い、その結果を整理した。二酸化炭素、浮遊粉じん、一酸化炭素、ホルムアルデヒドについては、諸外国や国際機関において、近年の知見に基づきリスク評価が行われ、ガイドラインが設定されていた。また、相対湿度に関しては、本研究のレビューによって、最適と考えられる相対湿度の範囲を提案した。これらの結果は、今後、建築物環境衛生管理基準を検討する必要性が生じた際に、参考になると思われる。

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